森で働く仕事、林業の現場に行ってきた。後編

今回のインタビューに答えてくれた大澤さんが、チェーンソーで作業している様子。

林業 磯村産業株式会社 群馬県高崎市倉渕町 その2

はじめに

前回、所長さんにうかがったのは、林業全体を俯瞰したお話だったので、今回は、林業の現場での仕事内容を大澤成樹(よしき)さん(2014年入社、28歳)にうかがってみた。

木を切る時の段取りは?

大澤さんは、現場撮影の時に、チェーンソーや重機を駆使して、かっこよく木を切っていた方。まず、はじめに、木を切り出す時の工程を教えてもらった。まとめると以下のようになる。

1)調査     作業道を通す場所や植わっている木の数などを把握する。
2)作業道の確保 現場の人は「道開け」と言う。
3)伐倒     間伐と皆伐とがある。
4)集材     伐倒した木を作業道のそばに集める。
5)造材     枝払い、玉切り(木を所定の長さに切る作業)
6)搬出     集積所(トラックが入れるところ)まで木を運ぶ。
7)検知     木の太さ、長さ、本数、体積の確認。
8)出荷

それぞれの作業は、全員が担当可能で、現場が変わった時や手の空き具合で担当が変わる。検知に関しては、お客さんによって、本数で数える場合もあれば、体積や重さで測る場合もあるという。また、市場に出す場合は、手数料を払って選別機にかけるので行わないとのこと。

朝のミーティング風景。他の人の仕事内容を確認することで、仕事をスムーズに行えるようにしている。
チェックリストに沿って、機材の状態を、皆で確認しているところ。

1日の仕事の流れは、どんな感じ?

「仕事は、朝7時30分から始まり、夏は17時まで。冬は16時30分までで終了です。夏は、午前と午後に30分ずつの休憩があって、冬は、それが15分ずつです。昼休みは1時間です。残業はほとんどありません。朝のミーティングでは役割分担を確認したり、作業の進め方のアドバイスをもらったりしています。帰ってから書く日報には、実際に作業した内容などをまとめます。作業自体は、重機で行うことが多く、手作業は、伐倒、植え付け、刈り払い(作業する場所の整備)です。」

大澤さんは、「肉体労働ですから。」と言っていたが、仕事の多くは重機で行われていたので、50代の自分がイメージする肉体労働と今どきの若者がイメージする肉体労働とでは、感覚が違うのかもしれない。

玉切り(木を所定の長さに切る)作業中の重機、ハーベスタ。油圧で作動するチェーンソーが付いている。

林業の機械「ハーベスタ」ついて

現場の写真にも時々登場する重機ハーベスタは、林業の効率化に重要な役目を果たしていそうなので、どんな重機なのか詳しく聞いてみた。

「ハーベスタは、伐倒、枝払い、玉切りの三つの作業が出来ます。あと、ウィンチがあるんで、材がどこかに落ちてしまったような時は、それで拾い上げたりします。」(現場の人は、切った後の木を「材:ざい」と呼ぶ)

上の写真と同じくハーベスタ。木を切った瞬間を撮影した。

運転席にあったタッチパネルみたいなのは、何に使うの?

「あれで、木材の径と長さが確認できるんです。木を掴むと径が把握できて、その径に合わせて、あらかじめ用意したプログラムが必要な長さを割り出してくれるんです。最後に目で見て曲がってなければ、切断をするためのボタンを押します。」

運転は、難しくないのかな?

「いや、1〜2週間で覚えられますよ。」

そうなの!?自分には、あんなにたくさんの関節がついた機材を動かすのは無理そうだ。

林業の作業服ついて教えて。

ハーベスタの状態について話し合う土屋さんと大澤さん。

「ズボンは、チェーンソーで作業するための特殊なもので、もし、チェーンソーが当たった時は、ズボンの布地が絡みついてチェーンソーが止まるようになっています。上着は、視認性が良くなってます。手袋は、防振です。チェーンソーの振動を軽減させる機能を持っています。あるのとないのじゃ全然違います。ブーツは、登山靴と安全靴を兼ねたようなものです。慣れてないと動きにくいんですが、他の靴じゃ作業しにくいんです。耳あては、チェーンソーや草刈機なんかのうるさい作業の時に使います。これらは、会社で支給してくれますが、こちらから要望を出したりもしています。」

林業に就職したのは、なぜ?

「体を動かすのが好きですし、漠然と山関係の仕事がしたくて、農林大学校の森林環境コースに入学しました。森林環境コースでは、森林や林業について勉強しました。キノコの栽培や造園なんかの実習もしたんですが、やっぱり林業を選びました。」

搬出作業の様子。青色の重機は、クローラ(履帯)付きの運搬車「フォワーダ」、黄色の重機は、木を掴むためのグラップルとウィンチがついた「スイングヤーダ」
集積場(土場:どば)まで運んできた木(材:ざい)に直径を記入している浅見さん。長さがわかっていれば、直径を測ることで体積が算出される。なお、木材は、1㎥あたり、または、1トンあたりいくらで販売されることが多く、1本いくらというのは少ないそうだ。
運搬用の重機、フォワーダで運んできた木を、集積所に下ろしている様子。
集積所に集められた木は、運送会社のトラックで運び出されてゆく。見ての通り、トラックにも木を掴むアームがついている。

実際の現場は、どう?

「一通り仕事を覚えるのには、1年くらいかかります。木を切るのは、でっかい木とか広葉樹は、難しいです。上手くなっていって木を切る楽しさとかもあるんですが、山なんで色々なものを発見できるのも楽しいです。街にはない花とか、見たことない鳥とかを観察するのが好きで、キノコなんかは帰って調べたり、知っている人に聞いたりします。あと、お昼休みにする昼寝が最高なんです。」

想像と違ってたことはない?

「そういうのは、ないですね。」

自分がサラリーマンだった20〜30年くらい前だと、本音と建前みたいなのがあって、実際に就職してみたら、事前に聞いていた話と全然違ったなんてことがあったけど、それもだいぶ変わって来ているのかもしれない。

安全とかで注意してることは?

「可能性としては、ツルが絡まって他の木が一緒に倒れちゃったり、枝が落ちてきたりすることもあるんですが、そういうのは事前に確認しているので、今のところ経験していません。実際にあったのは、重機に乗っている時に路肩に寄りすぎて路肩が沈んじゃったとか、伐倒の時に、風で伐倒方向がずれたってことはありました。」

夏の作業の様子。街中よりも涼しかったけれど、動けば、やっぱり暑かった。
伐倒する方向を見定める大澤さん。後工程を考えると、斜面の上側に倒さなければいけない、ちょっと難しい条件だ。

仕事は、どんな感じで教わるの?

「『緑の雇用』っていうのがあって、最初の3年間、仕事をしながらそこで研修を受けます。それ以外でわからないことは、先輩に聞きます。自分は、重機には詳しくないんで、ハーベスタなんかの操作方法は得意な人に聞きます。」

「緑の雇用」とは林野庁が2003年から行なっている新規就業者向けの支援活動で、国からの補助により年間30〜40日程度の研修が行われている。

今後の目標は?

「もっと木を切りたい。出荷を増やしたい。今までの記録は、1日に97本くらいなので、100本以上を目指したいですね。伐倒方向を迷わずに一発で決められるようになれれば、無駄な時間が減るので可能だと思います。伐倒の時は、倒す方向や退避場所なんかの安全確保を最初に考えますが、次の人が仕事しやすい方向も考えないといけないので、それをすぐに判断できるようになれば、100本以上いけるんじゃないかと思います。皆伐か間伐かとかの条件にもよりますけど。」

ぼくとつとした語り口で、「伐倒の方向が、バシッと決まるとうれしい」とか「チェーンソーで切った断面がきれいになっているとうれしい。」と語る大澤さんは、現代的な職人気質がにじむ方だった。

なお、この文章をまとめている最中に、1日100本の目標を達成したと連絡があった。やったね!

写真と文 西澤丞 インタビューは、2020年11月に行いました。