群馬県の農家さんで、おいしいブドウの作り方を教えてもらった。

取材協力:高橋農園(群馬県吾妻郡東吾妻町)
取材者:西澤丞

はじめに

あまり知られていないことだが、群馬県の農産物は、とてもおいしい。道の駅で買っても、農家さんが直接売っている場所で買っても、その味に驚かされることが多々ある。そんな中、とある農家さんのブドウがとってもおいしいかったので、どんな風に作っているのか気になって、取材させてもらうことにした。

取材させてもらったのは、高橋関明さん(81歳)の農園だ。僕は、ブドウに関する知識が全くなかったので、収穫が終わった後から、次の収穫が始まるまでの間を取材させてもらった。

ブドウを育てる工程について

高橋さんには、色々教えてもらったが、まずは、ブドウの実がなるまでの工程を、写真とともに紹介しよう。

・中途切り

12月。 緑の葉で覆われていた畑が、こんな感じになっていて、印象がまるで違う。この日は、雪が積もった時に枝が折れてしまわないように、剪定が行われていた。この場所は、夏でもクーラーをつけずに過ごせるようなところなので、冬はとても寒く、雪も降る。

・曲げ込み

3月。 実をつけるためには、古い枝を切って新しい枝を伸ばす必要があるので、12月に剪定した状態から、枝をさらに短く刈り込む。その際、5メートルの間に25個くらいの実がつくように、予測しながら切る。切った枝は、紫外線で分解される素材のテープを使って針金に固定し、実が出来た時の間隔が均等になるようにする。

なお、ブドウは植えてから3年くらいで実がなる。木の寿命は10年くらいと言われているそうだが、この農園には、20年前に植えた木でも現役のものがある。

・消毒

5月。 写真は無いが、石灰硫黄合剤という薬品を使い、最初の消毒を行う。貝がら虫などが付かないように予防することが目的だ。なお、収穫するまでには、7〜8回の消毒をするが、その都度、薬品が異なる。

・房づくり

花穂(かすい)整形とも言う。ぶどうの花は、10センチから15センチくらいの長さの房状にたくさん咲く。ただ、そのままでは房が大きくなりすぎるので、先端の3.5センチの花を残して、摘み取ってしまう。人によっては、4センチくらい残すそうだが、大きな房にしてしまうと味が落ちてしまうので、高橋さんは、3.5センチにしているとのこと。

・ホルモン処理

6月。 これは、種無しブドウにするための作業で、2回行う。ブドウの木にタネがあると錯覚させて、粒を大きくさせる効果もある。タネをなくすだけだと粒が大きくならないし、色も味も悪くなってしまうのだ。

・摘粒

ホルモン処理が済んだら、粒の間引きをする。一つ一つの房を観察しながら、粒が大きくなった時に潰れないように、また、房の形が良くなるように、粒を選んで摘んでゆく。これも先を読みながらの作業になるので、簡単にはできない。しかも、房の数が膨大なので、根気のいる作業でもある。

・袋かけ

7月。 粒がある程度大きくなってきたら、虫などから保護するために袋かけを行う。袋をかけた状態でも消毒をするので、それを避ける意味もある。ブドウが形になってくると、高橋さんもうれしそうだ。

・袋とり

8月。 1ヶ月くらい被せてあった袋を外す。外した後、品種によっては房を回して日の当たる向きを変え、割れた実があれば取り除く。実が割れてしまうのは、木が急激に水を吸ってしまうからだ。その対策として、この農場では土が露出している場所に芝を植えたり、木の根元にワラを敷くなどして、土の中の水分量が急激に変わらないようにしている。

・収穫

高橋農園さんでは、収穫したぶどうを、お客さまに直接販売している。農協などに卸す場合は、味よりも形が重視されるのだが、高橋さんは、お客さまに美味しいものを食べてもらいたいと思っているので、どこかに卸すことはしない。

さて、暑さが尋常じゃなかった今年(2023年)の出来は、どうなのか?収穫時期がちょっと前倒し気味になっているけど、味は上出来だとのこと。良かった、良かった!

ブドウ栽培のあんなこと、こんなこと

さて、ここからは、工程以外で気になったことを聞いてみた。

・ブドウはいつから作り始めたの?

「あんまり覚えてないんだけど、20年くらい前かな。昔は、イチゴも作ってたし、ミョウガも作ってた。ミョウガは、親父の代から作ってたから、自分も若い頃はミョウガを作ってた。ブドウは、そんなにやる気じゃなかったんだけど、友達が『沼田にブドウ畑があるから見に行くべ』って言うもんだからついて行って、『やってみるか』ってなった。深い考えがあったわけじゃない。」

袋を外す日に撮影した写真。品種によって外すタイミングが違うので、外してある畝と、そうでない畝がある。また、畝の左右では、日照が違うので、葉の剪定具合も変えてある。

上の写真を見ていて気がついた人がいるかもしれないけど、普通のブドウ畑は、頭上に枝が這わせてあって、そこにブドウがぶら下がっている。それに対してこの畑では、枝が垣根のように成形されていて、手の届くところに実がついている。このやり方だと枝を剪定する手間が掛かるものの、一番手間の掛かる実に対する作業は楽になる。これは、見学の時に講師として来ていた先生に教えてもらったのだそうだ。

ちなみに、ここまでに掲載した写真で、頭上に実がついている写真があるけど、それは、お客さまを招き入れる場所で撮影した写真だ。その場所には、畝がなく普通のブドウ畑のようになっている。

枝を剪定中の高橋さん。剪定は、被せてあったビニールを巻き上げたあと、台の上に登って行う。何回も行う必要があるし、脇芽を取る作業もあるので、やらなきゃいけないことがいっぱいだ。なお、写真では、応急的な台を使っていたが、この後、しっかりしたものに変更されていた。仕事のやり方も常にアップデートされているようだ。

・美味しいブドウを作るための工夫とは?

「化学肥料は、ほとんど使わない。石灰くらいかな。あとは、米ヌカと団粒っていう豚のふんを原料とした肥料をまく。ブドウを育てる土は、水はけが大事なんで、畑っぽい土じゃなくて石がゴロゴロしてるような土がいい。この畑も20センチくらい掘ると石ころだらけだよ。雨でも肥料でも、すーっと抜けちゃうような土がいいんだ。」

・美味しいブドウの見分け方は?

「見た目じゃほとんどわからない。色が濃くて艶がない方がいいかなってくらい。だから糖度計も使うし、自分で食べて確認する。医者に『血糖値が上がってますよ』って言われることもあるんだけど、『試食しなきゃ人に売れねえだんべ。』って」

・ここのブドウは、よそで作っているものと比べて渋みが少ないと思うんですけど。

「早く出しゃ売れるんだけど、渋みが残る。そうすると『あそこはまずい』なんてお客さんに思われちゃう。早く売りたいって気持ちがないわけじゃないけど、時間をかけても、うまいもんを売りたいわけだ。」

おわりに

「人生、惰性だよ。」なんて言いながら、60歳くらいになってからブドウ作りに挑戦するなんて、めちゃくちゃ前向きじゃないですか、高橋さん。しかも、ブドウ以外にも、お米やいろいろな野菜を作ってる。とても元気な81歳。

「ここに来りゃ、やることいっぱいあるんだよ。」

その調子で、これからも元気に美味しいブドウを作ってくださいね。


撮影と文:西澤丞  インタビューは、2023年9月に行いました。